永泉寺の伝説と七不思議
剱龍山永泉寺は、今から600余年前までは鳥海山中腹の興聖寺にあって鳥海山別当をしていたが、その後の鳥海山の管理は大物忌神社に移され、その縁もあって毎年の例大祭(今は5月5日)の夜明け前に第一の獅子舞がこの永泉寺から始まっていた時期もあった。こうした古い伝統的な慣習があるだけではなく、色々な不思議な伝説が伝わっている。

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源翁和尚が今も不思議な威徳を現す。
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稲荷大明神が異変を予告する。
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教えを興した山の神は開山の血脈を受けて弟子になり、永くこの山を守り、火災や盗難といった災いを無くしている。
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慈覚大師が天に祈って授かった霊感水は、身の邪気を払い長生きするご利益がある。
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慈覚大師が悪魔を降伏させるため祈った灰を持っていれば悪い虫の害を免れる。
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参道の龍灯杉の霊火は最も神秘的だった。(昭和49年倒壊危険の為伐採)
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御開山の戒めを守って、無声池の蛙は声を出さない。『出羽風土記三方絵図』には不鳴蛙(なかずのかわず)とある。
こうしたことは、現代人の科学や理屈では到底理解できないものばかりで、それだけに原始的で極めて興味深いものがある。中でも『龍灯杉』は、盆の13日には誰が火をつけるでもないのに霊火が輝き、龍神が天下ってきて点火すると信じられていた。
この他に、雨だれの音が聞こえない。盗難、災難がない。また源翁和尚が履いた下駄が自然に移動すると伝えられているが、これは夜が更けてから和尚が霊場を巡回するためであるという。本堂には『汗をかく』という不思議な丸柱があり、護摩壇の灰は慈覚大師のころから今日に至るまで尽きたことがなく、煙に煤けた護摩壇からは今も神秘的な響きがきこえてくるという。


永泉寺名所の謠
名所旧跡おちふじ寺は
悪蛇退治で仏縁深し
稲荷と白狐の知らせによりて
伽藍建築その名は高し
福寿稲荷は福寿をさずけ
家内安全商売はんじょう
武運長久護国の祈り
火事を防ぐは道了権現
諸仏諸神のたてもの多く
昔のままにて境内広く
山は神秘で浮世を忘る
木の花公園のぼりて見れば
ながめた気持ちはのびのびするぞ
秋のもみじは錦のごとし
慈覚大師の護摩たくところ
六百余年もすぎたるあとで
源翁和尚が初めて開く
七つの不思議は今でも不思議
開運出世をいのれよ共に
海では大漁人に福運
ご利益願って信心はげめ
六百余年も火事にあわぬ
よろずの宝物いつでも拝
詣りながらに遊ぶがよいぞ
東は鳥海 西では海を
花どき夏どき景色の外に
見るも楽しき名所でござる
